テクノクリート施工/研究会

コラム

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コンクリート劣化の予防保全

重大な事態に発展する可能性のある損傷も、初期段階で適切な対策をすれば、 損傷の進行を抑え、新設時と同様の性能にまで回復させることも可能です。 効果的な予防保全の方法を解説します。

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適切な予防保全

コンクリート・リフォームはライフサイクルコストの削減や 資源の有効活用、さらに建設事業の環境影響への低減といった 背景から、コンクリート構造物の大幅な長寿延命化が要求され、そのため、従来にも増して、正確な劣化メカニズムの解明と 将来の劣化予測が何より大切となっています。
塩害など重大な事態に発展する可能性のある損傷でも、初期段階で適切な対策を実施すれば、損傷の進行を抑えられますし、新設時と同様の性能にまで回復させることもできます。

コンクリート補修の要否判断方法

コンクリート構造物の補修が必要か否かの判断は、 正確な情報と適切な判断が大切です。
点検で把握したコンクリート表面のひび割れ、錆び汁、剥離などの 損傷状況の情報や非破壊検査などから得た鋼材の腐食状況、塩化物イオンなどの含有量、中性化の深さなどの情報を収集分析して、損傷の発生原因の特定と進行度合いなどを 正確に判断しなければなりません。

外部損傷

腐食進行度合いの判断は、概ね「外観損傷状況」、「内部損傷状況」の2つの視点から行われます。
まず、「外観損傷」はひび割れの幅を基本として、判断します。
ひび割れ幅が大きければ、内部鋼材は腐食しやすい状況下に 置かれていることになり、緊急に補修が必要となります。
ただし、ひび割れ幅が小さくても補修が必要なケースは ままあり、防水性と耐久性の観点からも判断基準は異なります。
しかし、いずれにしてもひび割れは 軽微な段階で補修することが望ましいといえます。

内部損傷

一見、何の損傷もないように見られるコンクリートでも、 塩害に汚染されていたり、中性化が進行していたりするケースがあります。
塩害は、他の劣化原因に比べ、劣化進行速度が速く、 急速に危険な状況に陥ってしまう点や、 従来の補修技術では、再劣化を防ぐことができず、施工方法によっては 劣化を加速してしまう恐れがあることなどから注意が必要です。
また、中性化も鋼材まで腐食してしまっているかどうかが 補修要否の判断基準となります。
しかし、近年では鋼材までの健全コンクリートの残り部分が10mm、 塩害環境下では25mmが鋼材腐食開始の限界値と定めているものもあり、予防保全の立場からすると、この限界値前に補修をするのが望ましいといえます。

補修方法の特定

外観上、同じひび割れでも原因はさまざまです。
単なる「乾燥収縮によるひび割れ」もあれば、コンクリート骨材を 形成するSiO2の結晶度の低いものがセメント中で膨張反応をし、 結果ひび割れを生じさせる、「アルカリ骨材反応によるひび割れ」。
そして、「中性化によるひび割れ」と「塩害によるひび割れ」などが 考えられます。
「乾燥収縮性のひび割れ」は、簡単なひび割れ注入工事を。
「アルカリ骨材反応によるひび割れ」は、ひび割れが収束した段階で ひび割れ注入をし、水分供給を断つため表面被膜で覆う等の方法があります。
また、塩害や中性化の補修計画には、 近年開発された電気化学的工法を活用し、再劣化を防ぐ補修を行います。電気化学的工法には、直接鋼材の腐食を防ぐ「電気防食工法」や コンクリート中の塩分を除去する「脱塩工法」、また中性化したコンクリートのpHを健全な状態に戻す「再アルカリ化工法」 などがあり、再劣化を防ぐ上でも、補修計画の上でこういった抜本的な 解決工法を組み込むようにします。

正しい補修計画を

劣化原因が違えば、補修方法も全く異なり、補修方法を間違えば、劣化は進行しつづけ、取り壊さなければならない状況へと進行してしまいます。
また劣化が一定基準以上進行してしまうと電気化学的工法でも 再生できない場合がありますので、早期対処が必要です。
大切なのは、常に損傷原因や損傷度合い、そして損傷進行度合いに応じて 早期に補修方針を立て、適切な施工を行うことです。

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